詐欺は誰にでも起こりうる犯罪であり、発覚が遅れるほど被害が大きくなりやすいのが特徴です。もし詐欺にあったと思った場合は、以下の記事を参考に、速やかに行動を起こしてください。
監修者:LEGAL Zeus法律会計事務所
代表弁護士 中井 達朗
30社を超える多業種の顧問先企業をサポートしており、企業法務分野において幅広い業態の知見を有する。また、企業内弁護士を務めていた経験を活かして、AI開発会社の取締役CLO(Chief Legal Officer)をはじめ、不動産会社、マーケティング会社、美容クリニック、社会福祉法人など、合計6社(2024年5月現在)の法務最高責任者も務める。
1. 詐欺にあったら最初にやるべきこと
(1) 焦らず冷静になる
詐欺に気づいた瞬間は、驚きと混乱から正しい判断ができなくなる方も多いと思います。落ち着くことが何より大切です。追加でお金を振り込ませようとする手口もあるため、まずは送金や対応をすぐにストップしてください。
(2) 被害状況を整理・記録する
・いつ、どのように相手と連絡を取り始めたか
・どのくらいの金額を支払ったのか
・やり取りの履歴(メール・SMS・通話記録 など)
これらは後の警察や弁護士への相談時に役立ちます。
(3) 周囲に相談する
家族や友人、職場の同僚など、身近な人に相談することで冷静なアドバイスを得られる場合があります。恥ずかしさや罪悪感から一人で抱え込むと、余計に状況が悪化してしまいます。
2. 詐欺罪の解説:法律上どうなる?
詐欺罪は、刑法第246条に定められており、他人を欺いて財物や財産上の利益を得る行為をいいます。具体的には以下の要件を満たすと成立する可能性があります。
- 欺罔行為: 人を騙す行為を行うこと。
- 錯誤: 被害者が錯誤に陥ること。
- 処分行為: 錯誤に陥った被害者が財物を交付したり、財産上の利益を処分すること。
- 財物または利益の移転: 被害者の財物や財産上の利益が行為者または第三者に移転すること。
これらの要件の間に因果関係が認められ、行為者に故意および不法領得の意思があったと認められることが、詐欺罪成立の条件となります
罰則
- 法定刑は「10年以下の懲役」が基本です。状況によっては執行猶予となる場合もありますが、被害金額や組織的な犯行などにより量刑が重くなるケースもあります。
3. 詐欺の種類と特徴
詐欺の手口は年々巧妙化しています。以下の代表的な事例を把握しておくと、被害防止に役立ちます。
(1) オンライン詐欺
フィッシング詐欺: 銀行や有名なECサイトを装った偽メールや偽サイトに誘導し、パスワード・クレジットカード情報を盗み取る手口
SNS・マッチングアプリ詐欺: 親密な関係を装い金銭をだまし取る
(2) 振り込め詐欺
オレオレ詐欺: 家族や親族になりすまし、緊急性を煽って振り込ませる
還付金詐欺: 役所職員を装い、医療費などの「還付金」を名目にATMから振込をさせる
(3) 投資詐欺
- 「絶対に儲かる」「元本保証」など根拠のない高配当を謳い、実態のない投資商品に資金を集める
(4) 副業詐欺
- 「誰でも簡単に稼げる」と謳い、登録料や初期費用を支払わせてたが稼ぐことができない
副業詐欺については下記記事で詳しく解説しております。
4. 相談先:すぐに連絡すべき機関は?
(1) 警察
- 最寄りの警察署へ行く、または「#9110」に電話
- 被害届や相談の窓口として、まずは警察への連絡が重要です
(2) 消費者ホットライン(188)
- 消費生活センターへの総合窓口
- 詐欺被害を含む消費トラブル全般についてアドバイスを受けられます
(3) 金融機関・クレジットカード会社
- 銀行振込の場合は早急に組戻し手続きを依頼
- クレジットカードの不正使用が疑われる場合は利用停止手続きを行います
(4) 弁護士
- 被害金回復のための具体的な手続きや、加害者との交渉、訴訟提起などのサポートを受けられます
5. 返金方法:被害回復へのステップ
詐欺被害で失ったお金を取り戻すのは簡単ではありませんが、以下の方法を試みる価値があります。
- 銀行振込の「組戻し」
銀行に依頼することで、詐欺の送金先口座がまだ引き出されていない場合は、振込を取り消す可能性があります。早期の手続きが重要です。 - クレジットカードのチャージバック
不正利用が疑われる場合、カード会社に連絡して「チャージバック」が適用されるかどうか確認しましょう。詐欺被害として認められれば、決済の取り消しや返金が行われる場合があります。 - 電子マネーや暗号資産の返金交渉
即時決済が多く、返金が難しいことが多いですが、発行会社や取引所に連絡し、可能性を探ります。
6. 弁護士に相談するメリット
当事務所では多数の詐欺被害に関するご相談を受けてきました。弁護士に相談するメリットは次の通りです。
・法的手続きのスムーズな進行
相手方への通知や刑事告訴、訴訟手続きなどを専門的にサポートします。
・返金交渉の代理人として被害者の負担軽減
相手方との交渉を弁護士が行うことで、被害者が負担を感じることなく手続きが進められます。
・トラブルの早期解決
専門的な視点からアドバイスし、裁判外の和解や協議の可能性も含めて最善策を検討します。
〈費用に不安を感じる方へ〉
- 法テラスで無料相談や費用の立替制度が利用できる場合があります。
7. 詐欺に遭ったときのQ&A
Q1. 警察に被害届を出せばお金は返ってきますか?
A. 被害届の提出は捜査の入り口となる大切な手続きですが、必ずしも返金が保証されるわけではありません。ただし、捜査が進むことで犯人が逮捕される可能性や、犯人側から返金に応じるケースも期待できます。
Q2. 詐欺かどうか分からない場合は?
A. 少しでも疑わしい場合は、消費生活センターや弁護士に相談してください。第三者の客観的な視点がトラブル回避に役立ちます。
Q3. 家族や知人が詐欺に遭いそうなときはどうすべき?
A. 手口を具体的に伝え、絶対に一人で判断させないようにしてください。既に送金している場合は、すぐに銀行への連絡と警察への相談を勧めましょう。
Q4. 被害が大きい場合はどうしたらいいですか?
A. 金額や被害内容が深刻な場合こそ、速やかに弁護士に相談してください。訴訟も視野に入れ、適切な手続きを踏む必要があります。
まとめ:一人で悩まず専門家に相談を
詐欺被害は人には言いづらいものですが、専門機関や弁護士のサポートを得ることで、被害回復や精神的な負担の軽減が期待できます。少しでも「おかしいな」と感じたら、ぜひ早めに動き出してください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。実際に問題を解決するためには、弁護士など専門家へ直接ご相談ください。